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最高裁判所第一小法廷 昭和30(あ)1775 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人萩原平の上告趣意第一点前段について。

所論は違憲をいう点もあるが、その実質は単なる法令違反の主張であつて、刑訴

四〇五条の上告理由に当らない。(なお、覚せい剤取締法四一条は、昭和二九年法

律一七七号により、その刑を重く改正せられ、右改正規定は公布の日たる同年六月

一二日から施行せられ、そして、右改正法律附則二項には、「この法律の施行前に

した行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が置

かれている。それ故、右改正法律施行前の所為については、旧法たる改正前の四一

条を適用すべく、これに新法たる改正後の四一条を適用することは違法であるとい

わなければならない。しかるに、原審の是認した第一審判決は、同判示第五、第六

の所為が、いずれも右改正法律施行前の所為であることを認定した上、「……第一

乃至第四の譲渡又は譲受はいずれも覚せい剤取締法第十七条第三項第四十一条第一

項第四号に、第五乃至第七の使用はいずれも同法第十九条第四十一条第一項第五号

に該当するから」と判示しており、前記第五、第六の所為につき、前記改正法律施

行後の所為たる判示第一乃至第四等の所為に対すると同様、これに新法たる改正後

の四一条を適用したものと解せられるのであつて、第一審判決はこの点において違

法であり、この点に関する所論は正当である。しかし、第一審判決の確定したとこ

ろによれば、本件被告人には、右第五、第六の所為の外に、前記改正法律施行後の

判示第一乃至第四等の所為があつて、これに対しては新法たる改正後の四一条を適

用すべきものであり、それらはすべて併合罪の関係に立つものであるところ、第一

審判決はそれらに対し、刑法四七条、一〇条を適用し、犯状の最も重い第二譲受罪

の刑即ち新法たる改正後の四一条の刑に法定の加重を施した刑期の範囲内において、

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被告人を懲役六月に処しているのであるから、所論第一審判決の違法は、刑訴四一

一条により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。そ

れ故所論は採るを得ない。)

同第一点後段について。

所論は単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

そして本件判示事実の認定に関しては、被告人の自白の外に、判示第一乃至第四の

覚せい剤譲受又は譲渡の事実については、それぞれ譲渡人又は譲受人の各自白調書

があり、判示第五乃至第七の覚せい剤自己使用の事実については、被告人方に居住

していたAの供述調書があつて、それらが被告人の自白を補強しており、また領置

にかかる物証もあり、これら各証拠を総合すれば、判示事実は、所論鑑定嘱託書及

び鑑定書を除いても、これを認定することができる。それ故、仮に右鑑定嘱託書及

び鑑定書を証拠に供したことに所論の違法があつたとしても、原判決が、虚無の証

拠によつて事実を認定したものであるとの論旨は、前提を欠くものであつて、採る

を得ない。

同第二点について。

所論は量刑の非難であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

(弁護上中野章の上告趣意は期限後の提出であるから判断を与えない。)

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三一年一一月一日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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